享年30歳。飛び降り自殺した画家・深井克美の描く幻想世界

深井克美
深井克美(ふかいかつみ)という画家をご存知でしょうか?30歳(1948年~1978年)という若さで亡くなられた函館生まれの画家です。

14歳の時、結核に感染し当時としては難病である脊椎カリエス(肺からの結核菌(けっかくきん)が血行性に運ばれて発症する結核性脊椎炎 出典:goo)を患っています。身体にハンディ・キャップを背負い重々しい幻想的な人物や風景を描いています。その作風はどこか寂寥感を感じさせこの世ではないような空虚で孤独な世界を作り出しています。

母一人子一人(父親とは死別、妹は養子に出される)で北海道の函館から上京、貧苦のなかに育ちました。もともと絵を描くことに関心を寄せていたこともあり、20歳の頃、自由美術展に出品された西八郎の作品に心打たれて弟子入り、画家の道を志します。

西八郎の「幻想リアリズム」と細密な描写を継承し、独自の幻想世界を切り拓き、人や鳥の身体のパーツが解体され、再び融け合って異形を成しています。昭和53年、30歳の時に銀座「シロタ画廊」で初めての個展を開催するも、同年12月に通りかかったマンションの8階から母親の眼前で飛び降り、自らの命を断ちました。

画業10年足らずという短い人生ではありましたが、昭和58年に道立近代美術館で回顧展「未完のランナー 深井克美展」、平成4年には道立函館美術館で「深井克美-幻想の世界」が開催、2019年2月5日(火)〜2019年3月21日(木・祝)の期間に北海道立近代美術館で「生誕70年・没後40年記念 深井克美展」が開催されています。

深井克美の展覧会が開催。初期から絶筆までの代表作を網羅

暗澹たる雰囲気ながらもどこか深みのある作風が印象的ですが、ひとたび深井さんの絵を知ったらとても浅はかな言葉では表せないような何かを感じます。

深井さんならではの持ち味は、鑑賞者に何かを問いかけたり、突き付けていたりしているような事ではないと感じたのが率直な感想でした。
漂う絵の空虚さからは日常における目まぐるしい病状の変化に、かえって「何もないこと」を望んでいたのかもしれませんし、コンセプトを深く意図しすぎていない自然体の画業でもあるとも感じます。まるで読むことができないけれど確固としてそこに存在している言葉の書かれていない本を読んでいるようで、作家の生き方だけではなく感情や関心事など、作家を取り巻く様々なことを空想することができました。

本当に考えさせられた作品或いは感動した作品の前に立つと人はその作品の前で涙を流すのでしょう。個人的には国内においてもっと評価されてもおかしくない作家であると思いました。
作家がその時の作者の状況、環境、感情などと密接に関わっていたとしても、鑑賞者はある意味で画家を本当の意味で知ることはできないのかもしれませんが、ほんの少し深井さんににじり寄れた気がしました。

未完のまま遺された「ランナー」は、100号のカンヴァスに、薄震の中から駆けてくる人物が描かれています。こうした動きのある全身像は、それまでの深井克美の作品には見られませんでした。どのような完成図を思い描いていたのかはわかりませんが、新たな展開の兆しが窺
えただけに、断たれた命が惜しまれますね。






深井克美 「旅への誘い」1975年 北海道立近代美術館蔵

深井克美 「旅への誘い」

深井克美 「2時37分」1976年 北海道立近代美術館蔵

深井克美「2時37分」

深井克美 「バラード」1973年 北海道立近代美術館蔵

深井克美 「バラード」






深井克美

深井克美

深井克美

深井克美






 
 
 

2015年7月16日に投稿された記事を再編集しています。

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