静謐な美の世界を描く。38歳で夭折した有元利夫の絵画世界

こちらは、日本人画家・有元利夫の作品です。有元利夫は1978年に具象絵画の登竜門とされていた安井賞で特別賞、翌年には同賞の大賞を受賞するなど、デビュー早々にその才能の高さを世に知らしめました。

1985年に急逝し、わずか10年ほどの短い活動期間ではあったものの、その独特な作風にはファンが多く、今でも展覧会が行われる人気作家です。作品は絵画だけにとどまらず、彫刻や版画などの作品、また好んで聴いていたバロック音楽に感化され、わずかながらではありますが、作曲もした痕跡が残っています。

有元利夫は「古典」や「様式」のもつ力に魅了されており、自身の作品でも、オマージュを捧げた、イタリア初期ルネサンス期の画家、ピエロ・デッラ・フランチェスカに大きな影響を受けていました。また、日本の古い仏教絵画にも傾倒していたため、彼の作品には日本美術特有の柔らかで清らかな静寂が満ちています。それは、一見フレスコ画のようでありながらも、古い仏教画のような、東西の垣根を超えた世界を創り上げています。

微かな笑みをたたえた女性の住む世界にはきっと、「時」というものが存在していないのでしょう。彼女たちの歩く道、手に触れるもの、窓の外に広がる風景・・・彼の織りなす物語の世界は、これからも静かに、ただそこに存在し続けるのでしょう。





有元利夫「花降る日」

有元利夫「春」

有元利夫「室内楽」

有元利夫「ささやかな時間」






有元利夫「厳格なカノン」

有元利夫「幕間の再開」

有元利夫「会話」

有元利夫「春の散歩」





有元利夫 絵を描く楽しさ (とんぼの本)
有元 利夫, 有元 容子, 山崎 省三
新潮社

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