不気味でゾッとする。「死」を描いたポーランドの画家ベクシンスキーの独自世界

不気味さと特有の世界観などからネットでは「見たら死ぬ」、「見ただけで呪われる」などと言われることがあるポーランド南東のサノク出身ズジスワフ・ベクシンスキー(Zdzisław Beksiński)(1929-2005)は、主に「死」をテーマとした絵画作品を多く残しています。

曽祖父は1863年に対ロシア蜂起にも加わった独立運動家で、ワゴン製造の創始者です。祖父は建築監督、父が測量技師だったということもあり、父の勧めで、クラクフ工業大学建築設計学部に入学します。ベクシンスキーは映画の制作に携わる仕事を希望していましたが、戦後の混乱の中でちゃんと食べていくには手に職をつけた進路がいいという父の方針が大きかったようです。

1952年、卒業後も、大学で学んだことを生かし1953年にシュテチン国営企業で現場監督をしますが、それと同時に絵画や写真、彫刻などの制作に熱中するようになります。1955年には妻とともに、生まれ育ったサノックに戻り、芸術家への道を志します。

1958年には絵画ではなく、写真作品やプラスティックを素材にした彫刻作品を制作しアヴァンギャルドの旗手として知られるようになります。1960年、写真と彫刻の制作やめて、1960年代頃から本格的に絵画の制作を始めたとされています。この頃から、怒りや憎しみ、苦痛、悲哀といった感情がグロテスクに損壊され、変形された人体や顔などをゴシック的でシュルレアリスムな手法で描き始めています。

1976年にクラクフで大規模な個展を最後に、作品展示などの積極的な活動を行わなくなり、1977年には、サノックからワルシャワへ移住しています。

1998年、妻のゾフィアが亡くなり、輸入版映画の翻訳、またポーランドロックのカリスマ的なラジオDJの仕事をし、鬱病の治療中だった息子トマシュが薬物の過剰摂取により自殺しています。息子トマシュが自殺したのはクリスマスイブでした。

そして、2005年2月22日、75歳の時にベクシンスキーは殺害されてしまいます。加害者グループは2人、うちの主犯はベクシンスキーの長年の友人であり、生活の世話もしていた人物の19歳の息子だったといいます。その息子の従兄弟の16歳少年が共犯として後に逮捕されています。犯人はベクシンスキーに借金の申し入れを断られ、口論となり、頭部と胸部を何度も刺し殺害しました。遺体には、17箇所の刺し傷がありました。

ベクシンスキーの作品にはタイトルはありません。タイトルから、作品が詮索されたり、解釈されたり、何かと結びつけられることを嫌がったそうです。何かしらの意味があるとは思いますが、ビジュアル的なインパクトと、感情に強く訴えるような作風から、タイトルを付けなかったことが、意図としてわかる気もします。

作品には、表記は制作年とサイズのみとなっています。






ベクシンスキー作品 1973年 73×87cm

ベクシンスキー作品 1976年 98×122cm

ベクシンスキー作品 1980年 87×87cm

ベクシンスキー作品 1984年 97.5×101cm






ベクシンスキー作品 1983年 87×87cm

ベクシンスキー作品 1983年 87×87cm

ベクシンスキー作品 1985年 97.5×132cm

ベクシンスキー作品 1986年 97.5×132cm






ベクシンスキーの作品(ポーランド国内)はどこで見ることができるのか?

母国のポーランドのサノック歴史博物館には、世界最大のベクシンスキーコレクションがあります。ベクシンスキー本人の遺言により相続先として指名された為、数千点という作品が所蔵されています。
あとは、市立アート・ギャラリー(チェストホーヴァ)ノヴァ・フタ・カルチャーセンターギャラリー(クラクフ)、ベクシンスキーの写真作品を多く所有するヴロツワフ国立博物館(ヴロツワフ)、シロンスク博物館などにコレクションされています。

行方不明になったベクシンスキー作品

過去に、ベクシンスキーの作品が日本人によって約60点ほど購入されていることがわかっています。その日本人によって購入されたベクシンスキーの作品は、東欧美術館という美術館に展示されていました。東欧美術館の図録にはベクシンスキーの作品が掲載されており、たしかに所蔵されていることがわかります。

ですが、すでにベクシンスキーの作品を所蔵していた東欧美術館は閉館しており、閉館したとともに、購入者との連絡が途絶え、未だ、ベクシンスキーの作品が誰かに販売されたのか、購入者がそのまま保管しているのか不明なままで、どこにあるかすらわかっていない状況です。以下はベクシンスキーの作品が掲載されている東欧美術館の図録です。

作品サイズも明記され、1mを超える大作だったこともわかります。この作品が見つかり、展覧会が開催されれば、大変な騒ぎになることでしょう。見つかる日が来ることを信じたいですね。

大半のベクシンスキー作品を所有管理し、現在のベクシンスキー公式ギャラリーホームページも主催する、ピョートル・ドモホフスキによると、1990年代、日本でベクシンスキー画集が発売される以前に、ドモホフスキから59点に上るベクシンスキー作品を購入した日本人がいた。その後日本人は大阪で東欧美術館を開いたが、現在はすでに閉館されており、ドモホフスキからその日本人への連絡先も音信不通になった。しかし当時、東欧美術館から発行されたベクシンスキーの非売品作品目録(発行元:株式会社ファレヴァ和幸)は現存しており、確かにそれら目録の作品が日本に存在したのは事実だが、販売されたか保存されたままなのか、2019年現在も行方が判らないままである。(Wiki)






ベクシンスキーの作品集

デッサン、ドローイングを中心に収録した画集「新装版 ベクシンスキ作品集成III」が発売され、1960〜70年代に制作された幻想でダークでエロティックなドローイングが掲載されています。ベクシンスキーは掲載されている作品の時期に神秘主義と性的倒錯世界に触発された独自の世界を描いています。

人物や建物、終末感漂うモチーフの描写も素晴らしいですが、描かれた世界の空気感やその場の雰囲気なども描かれており、見て描いたかのような臨場感があります。

本書は2010年に発売された「ベクシンスキ作品集成」の新版となっており、収録されている図版は約140点以上。価格は3,888円、120ページ、河出書房新社より発売されています。

また、多くのベクシンスキー作品を所有するピョートル・ドモホフスキや「独白するユニバーサル横メルカトル」、「DINER ダイナー」などで知られる作家の平山夢明などがエッセイを寄稿しています。ベクシンスキーファンにとっては必携の1冊ですね。



Amazonのレビューも好評のようですね。

抽象表現が濃くカリカチュア的で荒々しくも繊細な前半と、画風がリアルになりかつ雰囲気は洗練され地獄風味マシマシな晩年の作品に近い後半で構成され、その違いを比較して見る事が出来ます。
あとソフトカバーなので、ハードカバーのものや箱入りのものと違って気楽に見られますね。

白黒の絵ばっかりだし別に上手くもない。
ネットで見るような色彩のある綺麗な絵を期待していたので残念。
マニア用(?)という感じの画集です。

新装版 ベクシンスキ作品集成III

ズジスワフ ベクシンスキ
エディシオントレヴィル
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この記事の参考文献、または、その他のベクシンスキーの作品集

ズジスワフ・ベクシンスキー 永瀬 唯
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ベクシンスキーの作品が使用されたアルバムワーク(音楽)

ロック、ヘヴィメタル、ブラックメタルなどの音楽ジャンルのバンドのアルバムがほとんどです。音楽のジャンルとベクシンスキーの絵画世界がマッチしています。Youtubeにもバンドの映像が投稿されていますので、ご覧ください。

アシュダウタス(Ashdautas)「沈黙の太陽(Where The Sun Is Silent…)」 (2007)

ANTESTOR「Omen」(2012)

Antestor
CD Baby (2012-11-16)
売り上げランキング: 1,114,106

Blood of Kingu「Sun in the House of the Scorpion」 (2010)

Blood Of Kingu
Candlelight (2010-06-01)
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Collage「Safe」

Collage
Metal Mind Poland (2003-12-16)
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Collage「Moonshine」(1994)

Collage
Metal Mind (2006-10-31)
売り上げランキング: 499,410

Kampfar(カンプファー)「Profan(プロファン)」(2015)

Near Death Condition「Evolving Towards Extinction」(2014)

Near Death Condition
Unique Leader (2014-03-25)
売り上げランキング: 713,761

Bong「Stoner Rock by Bong」(2014)

作品掲載元

ズジスワフ・ベクシンスキー wiki
The Art of Zdzisław Beksiński
Muzeum Historyczne w Sanoku

ベクシンスキーの展覧会

2019年、現在のところ、ベクシンスキーの展覧会が開催される予定はありません。行方不明になったベクシンスキーの作品が発見されたり、海外のコレクター、所蔵している美術館の作品が来日する機会も、今後あるかもしれませんね。
展覧会が開催されることがわかりましたら、このサイトを通じてお知らせいたします。

ベクシンスキー関連の作品

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【4】ルネ・マグリットの不条理なユーモア。「言葉とイメージ」の問題を追求したシュールレアリスト

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