ヘンリー・ダーガーが遺した超大作。誰にも知られず60年以上描き続けた物語「非現実の王国で」

アウトサイダー・アーティストのHenry Joseph Darger Jr.(ヘンリー・ジョセフ・ダーガー・ジュニア)、略してヘンリー・ダーガー(Henry Darger)(1892-1973)はアメリカのイリノイ州シカゴで生まれます。4歳の時に妹を出産した母は、出産した際に感染症にかかり死亡、生まれたばかりの妹は養子に出されます。

その後、父と二人でアパートに暮らし始め、聖パトリック教会に付属する小学校に通い始めます。読み書きぐ充分できたヘンリーは、3年生に飛び級しました。父が体調を崩し、ヘンリーの世話ができなくなり、少年施設に預けられます。12歳の時に、病的兆候が現れ、また、著しい感情障害もあり、イリノイ州のリンカーン精神薄弱児施設に移されます。アスペルガー症候群、もしくは、なんらかの病理的精神障害があったのではないかと考えられています。

父が亡くなり、施設を脱走し、病院を転々とし床拭きや、皿洗い、包帯巻きなどの低賃金の仕事を60年近く続けます。

18〜20歳頃から、ヴィヴィアン・ガールズという王国のプリンセス7人姉妹を主人公にした「非現実の王国と知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ−アンジェリニアン戦争の嵐の物語」の執筆を始めてます。

年老いて階段の登り降りができなくなり、80歳、1972年に、その時にヘンリーが住んでいた家の大家であるネイサン・ラーナーに頼みカトリック系の老人施設を紹介してもらいます。しかし、翌年1973年に81歳で亡くなります。

身寄りがなかった為、ダーガーの部屋を片付けたのは、大家のネイサンでした。ダーガーの部屋は、十字架や壊れたおもちゃや雑誌などのジャンクの集積でした。その量はトラック2台分ほどだったといいます。その中に、ダーガーが使っていた旅行鞄の中に「非現実の王国で」というタイトルの原稿15冊があり、さらに巨大な画集が3冊、数百枚の絵の中には3m以上のサイズの作品も発見されました。彼は誰にみ見せることもなく半世紀以上、絵を描き続けていました。もちろん絵を描いていることなど誰も知りませんでした。

ダーガーは生前、影が薄く、人付き合いが悪いみすぼらしいホームレスみたいな人物として、周りからは把握されていました。近所からは追い出して欲しいという声もあったほどで、周囲の評判はあまり良くなかったといいます。そんな住人であるダーガーの部屋に残っていた作品と、その部屋を残しました。彼は描いた絵が作品という意識がなかったらしく、自分が死んだ時には全ての持ち物の焼却を希望していたと言われています。

ネイサンは、元々、シカゴ・バウハウスのフォトグラファーで優秀なデザイナーでもあり、ダーガーの作品に芸術的価値があると信じ、残した作品をこの世に発表しました。いまこうして作品が世界中で紹介され、多くの展覧会が開催されているのもネイサンの功績の1つと言えるでしょう。






「非現実の王国と知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ−アンジェリニアン戦争の嵐の物語」

ヘンリー・ダーガー

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ヘンリー・ダーガー

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この作品「非現実の王国で」は、ダーガーが19歳の時から81歳で亡くなるまで、およそ60年もの歳月を費やし描き続けた1万5,000ページの超大作です。
ダーガーは、ゴミを漁っては、雑誌の中のイメージを拾い集めていました。その集めた新聞や雑誌、漫画のイメージをスクラップブックに貼り付けて保管し、作品にもコラージュしたりして使用していました。






死後、残されたヘンリー・ダーガーの部屋

人知れず制作に取り組んだシカゴ市内のウェブスター通り851番地にある建物の3階の部屋は、主の死から25年を経て、取り壊しが決まった最後を写真家の北島敬三さんが撮影しました。

ダーガーの部屋からは、大量の作品とともに、彼の好きだった本も見つかっています。中にはライマン・フランク・ボームの「オズの魔法使い」や ‎ヨハンナ・ホーセル・スピリの「ハイジ」、チャールズ・ディケンズの「オリヴァー・ツイスト」、「クリスマス・キャロル」、「二都物語」などがありました。

写真集も発売されていますので、合わせてご覧ください。

HENRY DARGER'S ROOM
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ダーガーの部屋が初めて人の目にさらされたまさにその時に撮られた白黒写真と、この部屋の撤去が決まったあとの1999年に「朝日ジャーナル」の取材で訪れた四方田犬彦さんに同行した北島敬三さんが撮ったカラー写真、そして、生涯残されたたった3枚のダーガーの写真を中心にした、このひと部屋の写真集である。掲載された間取り図によるとバストイレはあるがキッチンらしきものはなく、4.12m×5.25mとあるから広さは20平米程度、不釣り合いに豪華な暖炉があるせいか、写真で見るとずっと広く感じられる。 ダーガーが描いた小説は彼にとっての理想の世界で、本人にしてみればそれを「日常」と信じ時を過ごすしか生きようがなかったのだろう。「室内から複数の声色が聞こえた」というのはまさにその「日常」を生きていた証しだ。美術を学んだことのない彼がその世界を視覚化するためにしたことは、参考になる図版をとにかく集めることだった。「外の世界」は印刷や写真によってあらゆる物事が転写されかつそれがゴミとして打ち捨てられている。

Amazonの商品の概要より抜粋

ヘンリー・ダーガーの展覧会

過去に日本で開催されたヘンリー・ダーガーの展覧会は、2002年にワタリウム美術館で初めて開催され、その後、2007年に品川の原美術館、2011年には原宿のラフォーレ・ミュージアム原宿で開催されています。
また、ヘンリー・ダーガーの部屋を撮影した写真展「ヘンリー・ダーガーの部屋」は新宿にあるエプソンイメージングギャラリーで2015年に開催されています。

ヘンリー・ダーガーの作品集及び、参考文献

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作品掲載元

HENRY DARGER, LA HISTORIA DE UN OUTSIDER
Henry Darger Center for Intuitive and Outsider Art / Chicago
Henry Darger MOMA
Artist of the Month: Henry Darger.

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