ピーテル・ブリューゲルの絵画作品。「バベルの塔」で有名なネーデルラントの画家

ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel)(1525-1530年頃〜1569年)は、現在のベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3か国にあたるネーデルラントに1526年に生まれます。日本でいうと戦国時代にあたる時期です。幼少期にどのように過ごしたかはわかっておらず、出世に関しても定かではありません。14歳頃には、イタリアに留学し、アントワープ指折りの画家ピーテル・クックに師事しています。

28歳頃にアントワープに戻り、大手出版社ヒエロニムス・コックの元で版画の下絵画家として活躍し、ブリューゲルが手がけたアルプスの風景画が人気となります。さらに、この頃に制作されたヒエロニムス・ボス風の「大きな魚は小さな魚を食う」などの作品が海外で翻訳されるほど、世界中で販売されるほど人気を博しています。

1551年には、組合の自由親方として登録され、翌年にイタリアへ修行に向かっています。ルネサンスの時期に制作された多くの巨匠たちの作品から多くを学び、作品に取り入れて行きました。その影響が現れているのが、代表作としてもっとも有名な「バベルの塔」と言われています。1563年にブリュッセルに移り住むまで、アントワープで活動することになります。同年に師事したピーテル・クックの10歳年下の娘と結婚していますが、その7年後、幼い娘と2人の息子長男ピーテル5歳、次男ヤン1歳を残して1569年に、43歳という若さで亡くなっています。

ブリューゲルが亡くなったあと、子供たちを育てたブリューゲルの妻マイケンも、9年後に亡くなっています。その後、子供達は画家であった妻マイケンの実母に引き取られ、長男ピーテルと次男ヤンに絵を教えたのは、この祖母でした。兄のピーテルは、グロテスクな人物描写で「地獄のブリューゲル」、次男ヤンは鮮やかな花々を描いて「花のブリューゲル」と呼ばれるようになります。

ヤン・ブリューゲルの子供、ヤン・ブリューゲル2世、その子供ヤン・ピーテル、アブラハム・ブリューゲルなどブリューゲルの死から140年近く画家の血脈は絶えることはなく、才能が受け継がれていきました。






    ピーテル・ブリューゲルの作品リスト

  • 大きな魚は小さな魚を食う
  • 聖アントニウスの誘惑
  • ネーデルラントの諺(ことわざ)
  • 叛逆天使の墜落
  • 悪女フリート
  • 雪中の狩人
  • 死の勝利
  • バベルの塔
  • バベルの塔

ピーテル・ブリューゲル「大きな魚は小さな魚を食う」 1556年 紙にインク プランタン=モレトゥス博物館

ブリューゲル33歳の時の作品で、「弱肉強食」と同じような意味として使われることわざを作品にしたもの。画面の左下には「ヒエロニムス・ボスの構想による」と明記されています。
ピーテル・ブリューゲル「大きな魚は小さな魚を食う」

ピーテル・ブリューゲル「聖アントニウスの誘惑」 1556年 銅版画 ブリュッセル王立図書館

ボス風のモチーフを扱った初期の作品。手前で戦っている人々は後の作品「謝肉祭と四旬節の争い」(1559年)で姿を変更されてい再び登場しています。画面左の聖人は、奥に描かれている様々な怪物たちに目もくれず、書物に視線を注いでいます。
ピーテル・ブリューゲル「聖アントニウスの誘惑」

ピーテル・ブリューゲル「ネーデルラントの諺(ことわざ)」 1559年 板に油彩 ベルリン国立絵画館

「大きな魚は小さな魚を食う」と同様に、ネーデルラントに伝わることわざを1つの民衆のいる風景の中に混在させた作品となっています。悪魔を縛りつけたり、壁に頭をぶつけたり、夫に青いマントを被せたりなど、各所に、その要素が散りばめられており、その数は100近いことわざが描かれています。
画面中央にも「大きな魚は小さな魚を食う」が一部に描かれています。

ピーテル・ブリューゲル「叛逆天使の墜落」 1562年 板に油彩 ベルギー王立美術館

神の被造物でありながら、高慢や嫉妬のために神に反逆し、展開を追放された堕天使を描いています。画面中央にいる青いマントを羽織り、金の鎧をまとい、剣を振りかざしているのは、大天使ミカエルで、怪物となった悪魔軍団と戦うために、天使軍団を率いています。伝統的な画題ではあるものの、ブリューゲルが描いたのは、人間の頭部を持つ昆虫のようなクリチャーなどグロテスクな姿をした怪物たちで、人間世界の貪欲や交換、嫉妬などの罪です。
1555年にフランス・フローリスも同じ題材で描いますが、ミケランジェロに強く影響を受けた、マニエリスムの典型的な筋骨たくましい裸体表現が見られます。
ピーテル・ブリューゲル「反逆天使の転落」

ピーテル・ブリューゲル「悪女フリート」 1562年頃 板に油彩 マイエル・ファン・デン・ベルフ美術館

背景の赤い炎などの地獄のイメージはボスの影響を強く見ることができます。画題となっている「悪女フリート」は、亭主を尻にしく猛女で魔女、もの狂い女で、愚行と無分別にいたる貪欲を象徴しています。悪女フリートは台所用品に紛れて箱などを持つ姿から「地獄から戦利品を持ち帰るなら悪女を連れてこい」などと行った当時のことわざが、「悪女フリート」の姿に反映されていることがわかります。
ピーテル・ブリューゲル「悪女フリート」

ピーテル・ブリューゲル「雪中の狩人」 1565年 板に油彩 ウィーン美術史美術館

1563年にブリュッセルに移り住み、39歳頃に描かれた作品とされています。手間の狩人たちから、奥のそびえるアルプスの山々の風景は壮観。雪の風景を描いたのは、1564年から翌年にかけて大寒波が襲来したことが由来しているのではないかと考えられています。
画面左に見え女性たちは、火を焚いて保存食であるソーセージや塩漬けを作るために、解体した豚の毛焼きをしている光景です。
ピーテル・ブリューゲル「雪中の狩人」

ピーテル・ブリューゲル「死の勝利」 1562-63年 板に油彩 プラド美術館

死を象徴する骸骨が人間を襲う、恐ろしい光景が描かれています。画面右には骸骨の軍隊が押し寄せ、それを人間たちがせき止めていますが、押させきれず、また、十字の黒い棺桶の中に導かれるがままに入っています。また、死体を入れた棺桶を運ぶ骸骨や大鎌を振るう骸骨、木に吊られた大きな鐘を鳴らす骸骨など様々な光景が描かれます。遠景には、処刑される人々や、崖から引きずり込まれる男などもいます。人間と、骸骨=死が戦争している図ですが、「死」から逃れることはできず、「死」が圧勝しています。
ピーテル・ブリューゲル「死の勝利」

ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」 1563年 板に油彩 114×155cm ウィーン美術史美術館

言わずと知れたブリューゲルの代表作。旧約聖書の「創世記」にある神話で、ノアの子孫たちが無謀にも点にそびえる建造物を作って神の罰を受ける話で、作られた街は混乱を意味する「バベル」です。イタリアにあるローマのコロッセオのイメージを応用し、建造中の壮大なバベルの塔を描いています。
こちらはウィーン美術史美術館に所蔵されている「バベルの塔」です。

ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」 1568年 板に油彩 60×74.5cm ボイマンス美術館

こちらはボイマンス美術館に所蔵されている「バベルの塔」。ウィーン美術史美術館よりサイズが小さいです。ウィーン美術史美術館に比べると、かなり完成が近づいていることがわかります。壮大に描かれている一方で、細部に注力された描き込みも圧巻です、細部の画像をご覧ください。塔自体の細部だけでなく、建築に携わる人々など約1400人がこの画面に描かれています。
ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」

「バベルの塔」細部

「バベルの塔」細部

「バベルの塔」細部






この記事の参考文献

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タッシェン・ジャパン
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ブリューゲルへの招待
朝日新聞出版
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